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海辺の古都・鎌倉:江の島と紅富士、水中花火、神職の沐浴…波打ち際の絶景に出会う

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“清め”の浜がマリンレジャーの聖地に

社寺の集まる歴史的景観と海辺の風情が調和したロケーションは、古都の中でも奈良や京都にはない、鎌倉だけの特徴である。

七里ヶ浜越しに三浦半島を望む 写真=原田寛
七里ヶ浜越しに三浦半島を望む 写真=原田寛

日本では古くから、神仏に奉仕する身を冷水によって清める風習があり、禊(みそぎ)や水垢離(みずごり)と呼ばれる。おけで水をかぶる略式の場合もあるが、本来は海や川で沐浴するもの。

褌(ふんどし)姿で身を清める神職 写真=原田寛
褌(ふんどし)姿で身を清める神職 写真=原田寛

鎌倉幕府を開いた源頼朝も、あつく信奉した箱根神社や伊豆山神社に参詣する際、前浜(まえはま=現在の由比ヶ浜)で身を清めた。今でも鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)では例大祭(9月14~16日)の初日、神職が日の出と同時に由比ヶ浜の海に入る「浜降式(はまおりしき)」を執り行う。

漁師やサーファーの人影がさす由比ヶ浜のあけぼの 写真=原田寛
漁師やサーファーの人影がさす由比ヶ浜のあけぼの 写真=原田寛

普段の由比ヶ浜は、夜が明ける頃に行くと、沖へと繰り出す漁船を目にする。シラスやワカメ漁が盛んで、海岸でワカメを干す光景に港町ならではの情緒が感じられる。

腰越海岸のワカメ干し 写真=原田寛
腰越海岸のワカメ干し 写真=原田寛

一方ではサーフィンやヨットなどのマリンスポーツも盛んだ。日本の海水浴発祥の地は鎌倉から大磯にかけての湘南海岸で、サーファーの聖地でもある。早朝の浜辺では、“仕事前にまずはひと乗り”という姿が多く見られる。

運が良ければ、江の島越しの赤富士を一望できる 写真=原田寛
運が良ければ、江の島越しの紅富士を一望できる 写真=原田寛

夜明け頃、稲村ヶ崎の鎌倉海浜公園では、江の島と朝日を浴びた富士山が競演する絶景を楽しめる。冬場には、雪を頂いた山頂が薄紅色に染まる紅富士が見られることも。日が昇ってからも、次々に打ち寄せる波が岩場で白く砕ける光景に心洗われ、時のたつのを忘れてしまう。

波しぶき散る七里ヶ浜 写真=原田寛
波しぶき散る七里ヶ浜 写真=原田寛

貴重な海の水中花火、趣ある夕景も必見

鎌倉市南西で逗子市と接する材木座海岸の南端は、潮が引くと無数の石が顔を出して島のようになる。この辺りは「和賀江嶋(わかえのしま)」といって、鎌倉時代の1232(貞永元)年に造られた現存最古の築港遺跡。江戸時代までは港として機能していたといわれるが、今はただ丸石が残されているだけ。史跡としては物足りないものの、大潮の干潮時には磯遊びに絶好の場所となり、家族連れでにぎわう。

国の史跡に指定されている和賀江嶋 写真=原田寛
国の史跡に指定されている和賀江嶋 写真=原田寛

鎌倉の夏の海で最も人が集うイベントといえば、花火大会に違いない。湘南海岸では逗子や葉山、江の島、茅ヶ崎、平塚などでも、多彩な花火の祭典が繰り広げられる。鎌倉は規模としてはそれほど大きくないが、珍しい“海の水中花火”が人気で毎年大混雑する。水中花火というのは、沖合を移動する漁船から海中へと花火玉が投げ込まれ、海面に浮かんできた瞬間に開花する仕組み。湖や川と違って波の影響で打ち上げが難しいので、海辺の花火大会で鑑賞できる機会はめったにない。

海面で火花が半円を描く鎌倉花火大会 写真=原田寛
海面で火花が半円を描く鎌倉花火大会 写真=原田寛

にぎやかな夏が終わると、海岸に静けさが戻ってくる。やがて秋が深まるにつれ、風がススキの穂を揺らすようになり、夕日の美しさが際立つ季節に。秋から春にかけても静寂な雰囲気が魅力的で、「海辺の古都」の情緒を堪能できるだろう。

夕凪の由比ヶ浜 写真=原田寛
夕凪の由比ヶ浜 写真=原田寛

写真・文=原田寛

バナー写真:和賀江嶋、江の島、富士山を望む材木座海岸の夕照 写真=原田寛

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