先祖供養の風習が、百貨店の販売戦略に
夏のお中元、年末のお歳暮は、家族や親類、お世話になっている人に、日頃の感謝を示すための贈り物。日本の独特の文化で、お得意様をリストアップして大量に発送する企業もあるため、受け取ったものの不思議に感じる外国人もいるらしい。そのルーツは、先祖に酒や果物などをささげる風習にある。
日本では古くから、旧暦7月15日を中心とする盆に先祖の霊を迎える「盆礼」という風習があり、親族一同が実家や本家に集まったり、ご近所同士で供物をやりとりしたりしていた。一方、中国においてこの日は道教の神「中元」の誕生日(中元節)とされ、お供えすることで日頃の罪を赦してもらう行事を営んだ。その中元という言葉が日本で盆の風習に取り込まれ、供物用の贈り物を指すようになったという。
お歳暮は室町時代の正月行事に由来する。正月にも祖霊を家に迎えたため、暮れには親族やご近所がお供えを持ち寄った。実質的には目上の親族への進物で、身内は“お裾分け”にあずかった。
それが江戸時代に様変わりする。商家が決算期を迎える盆と大みそかに向け、お中元、お歳暮として上得意に感謝の品を配り始めたのだ。近代に入ると、百貨店が「盆暮れにはお世話になった人へご進物を」とキャンペーンを打ったことで、贈る相手は恩師や上司、取引先へと広がり、全国的に定着していった。

盆暮れは百貨店の書き入れ時。さまざまなギフト商品が並ぶ=2022年11月2日、東京(時事)
贈る時期や表書きにも気遣いを
お中元やお歳暮の定番は、乾麺や調味料、果物、菓子、飲料などの食品類。供物だった名残といえるが、受け取った品を仏前に並べる家庭は少なくない。同じ“消え物”である石鹸や洗剤もよく選ばれるのは、受け取った相手が負担に感じず、気軽に日常使いできるようにという心配りだ。
お中元を届ける時期は地域によって開きが大きいので、できれば相手先の慣例に合わせたい。お歳暮の場合は概ね、正月準備を始める12月中旬までとされるものの、年々早まる傾向にある。正月用の生鮮食品は例外として年の瀬でもよいが、里帰りするかなど相手の都合を確認しておきたい。
本来は持参して手渡しするものだが、昨今は百貨店や通販会社からの発送が当たり前になってきた。できればあいさつ状を別送するなどして、お届けの通知を兼ねて日頃の感謝や近況を伝えるのがベターだ。なお、時期を過ぎたら、お中元は「暑中見舞い」や「残暑見舞い」、お歳暮は「お年賀」や「寒中見舞い」と表書きを変えよう。
お中元シーズン後の表書き
- 暑中見舞い:立秋=8月7日ごろまで
- 残暑見舞い:処暑=9月7日ごろまで
お歳暮シーズン後の表書き
- お年賀:松の内=元日から1月7日まで(関西は15日まで)
- 寒中見舞い:立春=2月4日ごろまで
表書きを記すかけ紙に水引と熨斗(のし)があしらわれるのは、相手の幸せを祈る伝統的なモチーフだから。ラッピングにまで心を配るのは、日本の贈答文化の特徴であり、破かず楽に外せる“百貨店包み”にも同じことが言える。受け取った側は礼状で、心遣いへの感謝を伝えよう。
監修:柴崎直人(SHIBAZAKI Naoto)
岐阜大学大学院准教授。心理学の視点で捉えたマナー教育体系の研究を専門とし、礼儀作法教育者への指導にも努める。小笠原流礼法総師範として講師育成にも従事。
文=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:PIXTA





