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「海の地図」が漁業復興を後押し!:能登半島地震で海底隆起した輪島市で、海女さんらが利用開始

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海底隆起で復興遅れる輪島の漁業

石川県漁業協同組合輪島支所で9月4日、「海の地図」の利活用説明会が開催され、海女さんを中心とする地元漁業者が真剣に耳を傾けていた。

石川県において最大の漁船数、水揚げ高を誇ってきた輪島港は、能登半島地震によって岸壁や港湾施設が損壊。取れたての海の幸が並ぶことで人気観光地だった朝市通り周辺でも大規模な火災が発生し、約5万平方メートル、250棟近くが焼失した。

約40人が参加した説明会では、海女さんの姿が目立った
約40人が参加した説明会では、海女さんの姿が目立った

(左上)観光客でにぎわっていた当時の朝市通り 写真:PIXTA (右上)朝市通りの西の玄関口だったいろは橋からは立ち入り禁止。対岸は草むらになっている (下)レトロな街灯の両脇には海産物を扱う店が並んでいた
(左上)観光客でにぎわっていた当時の朝市通り 写真:PIXTA (右上)朝市通りの西の玄関口だったいろは橋からは立ち入り禁止。対岸は草むらになっている (下)レトロな街灯の両脇には海産物を扱う店が並んでいた

漁業の復興において、大きな障壁となっているのが観測史上最大規模の海底隆起だ。輪島港付近では1.5~2メートル隆起したため、漁獲物を荷下ろしする岸壁では船との高低差をなくすために仮桟橋を設置。水深も浅くなったことで、接岸可能な場所が不足した漁船だまりでは多層係留が常態化し、大型船は金沢港など別の港を利用している。

「輪島の海女漁の技術」として、国の重要無形民俗文化財に指定される伝統の素潜り漁にも甚大な影響が出た。2024年9月の豪雨による土砂流入が追い打ちとなり、海女さんたちは変わり果てた漁場の調査に日々追われている。

船が接岸しているのが仮桟橋。元の荷揚げ場は、約1.5メートル隆起した
船が接岸しているのが仮桟橋。元の荷揚げ場は、約1.5メートル隆起した

(上)輪島港近くの景勝地・鴨ヶ浦も、2メートル以上の隆起で様変わりしていた。周辺は海女の漁場で、サザエや海藻類が取れる (左下)海水に浸っていた震災前の写真 PIXTA (右下)西岸にある袖ヶ浜からの散歩道は、がけ崩れで寸断されていた
(上)輪島港近くの景勝地・鴨ヶ浦も、2メートル以上の隆起で様変わりしていた。周辺は海女の漁場で、サザエや海藻類が取れる (左下)海水に浸っていた震災前の写真 PIXTA (右下)西岸にある袖ヶ浜からの散歩道は、がけ崩れで寸断されていた

震災前後の海底地形データを計測した「海の地図」

苦しい状況から抜け出すきっかけとして漁業関係者が期待を寄せるのが、日本財団の支援で日本水路協会が推進する「海の地図プロジェクト」だ。船の安全な航行や防災などに役立てるため、航空レーザーで水深20メートルまでの浅海域を測量し、日本の総海岸線3万5000キロの約9割の海底地形図を2022年から10年計画で作成している。

能登半島北部の調査は22年秋に実施済みだったが、震災で海底隆起が発生したことから24年4~5月に再調査。世界で初めて震災前後の海底地形の変化が分かる詳細データを取得し、震災直後は最大4メートルと推測されていた海底隆起が、輪島市猿山岬付近で5.2メートルに達していたことを発表した。

輪島に10年以上通い、海女と協力しながら海洋資源の調査を重ねてきたわじま海藻ラボ代表の石川竜子さんは「海の地図というものがあると聞いて、調査はもちろん、新しい漁場の探索にも使えると思い、被災地のために先に出してもらえないかとお願いした」と振り返る。さまざまな分野で震災復興支援に取り組む日本財団に対しても、同様の声が多方面から上がったことから、今回の能登北部版の先行提供が決定した。

石川さん(中央)と海の地図プロジェクトの面々 写真提供:日本水路協会
石川さん(中央)と海の地図プロジェクトの面々 写真提供:日本水路協会

漁協裏手の岸壁には、車の二重駐車のような多層係留が延々と続いていた
漁協裏手の岸壁には、車の二重駐車のような多層係留が延々と続いていた

持続可能な漁業や海の安全にも活用

6月から試験的に地図データの提供を開始すると、海女さんたちから「地名を載せてほしい」「等深線があると便利」「紙版も必要」といった意見が多数寄せられた。それらを改善しながら、今回のスマートフォン版と紙版の先行リリースにこぎ着けたという。

輪島の海女漁保存振興会のメンバーは「これまでは等深線もない白地図を使っていたので、砂地と岩場も分からなかった。私たちも漁場までは船を使うので、これからは安心して調査や漁に向かえる」と語ってくれた。

防水加工した紙版(左)とスマートフォン版(右) 写真提供:日本水路協会
防水加工した紙版(左)とスマートフォン版(右) 写真提供:日本水路協会

輪島の海女漁保存振興会のメンバーと南志見地区の江尻一希さん(右端)
輪島の海女漁保存振興会のメンバーと南志見地区の江尻一希さん(右端)

現時点で提供が始まったのは、輪島港周辺の輪島崎地区と名舟港がある南志見地区の2カ所。今後は珠洲市や能登町などに拡大して能登北部版を完成させ、護岸工事や土砂の浚渫(しゅんせつ)作業にも役立てていく予定だ。

名舟港の漁業者・江尻一希さんは「子どもや年配の方に『危険だよ』と伝えても、(直接目で見えない)海底の変化は実感しづらいようだったが、この地図があれば説明しやすくなる」と、海難事故の防止にも利用する考えだ。さらに「海底隆起によって、今まで近寄れなかった未開発な漁場が見つかる可能性もある」と希望を抱く。

石川さんも「現在は資源管理どころか、資源自体がどれだけ残っているかを調査している段階。そうした土台となる作業を、海の地図の上で取りまとめている」としながら、「今後は海女さんたちが持続可能なビジネスモデルを、この地図を活用しながら考えていけたら」と語ってくれた。

海の地図プロジェクトの進行状況は全国の37パーセントと道半ばだが、能登での要望や活用事例を生かすことで、より実用性の高いものになりそうだ。早期の一般公開に期待したい。

復旧工事が続く名舟港は、いまだ流木だらけの状況だった
復旧工事が続く名舟港は、いまだ流木だらけの状況だった

取材・文・写真=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)

バナー写真:海底隆起した輪島市の名舟港周辺と海の地図のスマートフォン版。消波ブロックの白い部分は、震災前まで海の中だった

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