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使用食材が一目で分かる「フードピクト」:大阪・関西万博で訪日客に食の安心をお届け

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苦い経験を糧に一念発起

ピクトグラムは1964年の東京五輪で日本が導入。各競技が絵を見ただけで分かることから、注目を集め、世界に広がった。使われている食材が一目で分かる「フードピクト」には、アレルギーを引き起こす可能性がある小麦、卵、そば、甲殻類やナッツのほか、宗教上の理由やビーガン(完全菜食主義者)で食べられない豚肉、アルコールなど、現在38品目が用意されている。

開発したのは神戸市のベンチャー企業「フードピクト」。代表の菊池信孝さんが大学生だった2005年、サウジアラビアから初来日したイスラム教徒のゲストを和食でもてなそうと、豚肉やアルコールを料理に使わない店を探した。しかし、安心できる店を見つけられず、食べさせてあげられたのは、大手ハンバーガーチェーンのフィッシュバーガー。この苦い経験がフードピクト開発に挑むきっかけにつながった。

こだわりは「おいしそう」

フードピクトを国際規格にしようと、菊池さんはピクトグラムで実績のあるデザインディレクターを訪ねた。話し合いの結果、食べ物を表すものだから「おいしそうに見える」ことにこだわった。外形は丸みのあるスーパー楕円(だえん)、背景はカスタードクリームの黄色、絵文字は煮込み料理をイメージするデミグラスソースの褐色を採用した。日本人と外国人をそれぞれ750人、計1500人を対象に試作を使ってモニタリング。理解度や視認性を調査し、改善を重ねた。

最も苦労したのは乳製品だ。最初は集乳缶にしようとしたが、外国人の理解度が70%と振るわなかったことから、牛乳パックに変更。しかし、国や地域によっては牛乳パックを使わないことが判明し、最終的には牛乳瓶に牛の絵を描くことで理解度は90%を超えるまでに高まった。

乳のデザイン変遷。左から集乳缶、牛乳パックを経て、牛乳瓶に落ち着いた(©︎ FOODPICT & NDC Graphics)
乳のデザイン変遷。左から集乳缶、牛乳パックを経て、牛乳瓶に落ち着いた(©︎ FOODPICT & NDC Graphics)

アルコールのピクトグラムは2種類を用意。和食などで日本酒が使われていても、加熱によって成分が揮発している「酩酊(めいてい)性のないアルコール」を、背景を白抜きに反転させるなど区別する工夫も施した。

「ピクトグラムには国や地域、文化の違いを超えて伝える必要性を痛感しました」(菊池さん)。

食の安全・安心を海外へ

試行錯誤の末、2010年に日本産業規格(JIS)や国際標準化機構(ISO)の規格に準ずる14種類が完成。19年には大阪市で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で採用され、注目を集めた。24年には新たにアレルギーの表示推奨品目に指定されたマカダミアナッツを追加するなど時代の変化にも対応し、発案から20年間で38品目を完成させた。

現在では成田、羽田、関西などの国際空港やレストラン、ホテルなど外国人が多い場所を中心に国内約100社、1600を超える店舗のほか食品包装でフードピクトが導入されている。

大阪・関西万博会場では、大阪外食産業協会のパビリオンをはじめ、飲食店など八十数カ所でメニューやプライスカードに使われ、国内外からの来場者へ視覚的に食材の安全・安心を届けている。

大阪・関西万博の会場内に設置されたメニューの看板(フードピクト提供)
大阪・関西万博の会場内に設置されたメニューの看板(フードピクト提供)

大阪・関西万博の会場内で販売される幕ノ内弁当にもフードピクトを表示(フードピクト提供)
大阪・関西万博の会場内で販売される幕ノ内弁当にもフードピクトを表示(フードピクト提供)

菊池さんは「たくさんの方に喜んでいただけてうれしい。国や地域、文化が違っても同じ食事を囲み、食の楽しさを共有できるよう、フードピクトが日本だけでなく、海外でも広がってほしい」と話す。

さらにフードピクトは災害時の利用にも期待が高まる。2011年の東日本大震災発生時、避難所に集まった食物アレルギーのある人や外国人に使用食材の情報提供が十分にできなかった教訓を生かし、国や自治体が連携して災害時の避難所への配備が進んでいる。

取材・文=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:38品目のうち、基本となる16品目のピクトグラム(©︎ FOODPICT & NDC Graphics)

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