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中学受験「入試のサブスク充実」「大学入学枠増量」相次ぐ生徒確保策:人気高止まりも少子化に戦々恐々

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横ばい期に入った中学受験

受験データなどを分析する首都圏模試センターの推計によると、2025年の首都圏の私立、国立の中学受験者数は前年比100人減の5万2300人。「受験率」は前年比0.02ポイント減って18.1%と横ばいだった。大学入試制度変更への不安や経済状況の改善などの影響で中学受験は約10年間伸び続けたが、昨年からは横ばい期に入ったとみられている。少子化や物価高が壁になっている可能性があり、中学受験業界の伸びしろは失われつつある。

首都圏私立・国立中学受験者数と受験率

「2万円で何回でも」に出願殺到

こうした中、2024、25年の中学入試で「台風の目」となったのが、さいたま市に本部を置き、埼玉3校、東京1校、茨城1校の中高一貫校を運営する開智学園グループだ。24年春に開智所沢(埼玉県所沢市)を開校したのを機に、2万円払うと系列校を受験し放題になるいわば「入試のサブスク」ともいえる制度を充実させ、受験生を一気に引きつけた。

さいたま市岩槻区の開智学園で、中学校の試験会場へと向かう受験生と保護者=2022年1月10日(埼玉新聞)
さいたま市岩槻区の開智学園で、中学校の試験会場へと向かう受験生と保護者=2022年1月10日(埼玉新聞)

多くの私立中は1校で複数の試験日があり、同じ学校を2回挑戦するには2回分の受験料が必要だが、開智グループは開智所沢の開校により埼玉と東京の4校に限っても2万円で11回も試験を受けることができるようになった。

さらに開智所沢は、系列拠点校の開智(さいたま市)と入試問題を共通化。入試を1回受ければ2校同時に合否判定を受けることができるようにもした。

埼玉の中学入試は都内より3週間ほど早い1月10日に始まるため、もともと「取りあえず合格を」「腕試しに」と首都圏の受験生が殺到する。開智グループは25年入試では、あまりの人気で用意した試験会場が埋まってしまい、一部で受付を一時停止したほどだ。

超人気校を除き、各校とも受験生確保へ工夫を凝らしており、「複数回受験で点数のかさ上げ」「写真・調査書不要」「試験当日朝の出願受付」など、さまざまな手法がみられる。

ユニークな入試形態を取り入れ、多様な能力を持った子どもを集めて学校の魅力を高めようとする例もある。「英語プレゼン」「サイエンス特化型」「算数1教科型」「探求型」「適性検査型」などだ。

宝仙学園(中野区)は多様な入試を実施。与えられたテーマについてグループごとに調べ、発表する形式もある(首都圏模試センター提供)
宝仙学園(中野区)は多様な入試を実施。与えられたテーマについてグループごとに調べ、発表する形式もある(首都圏模試センター提供)

明治、立教、法政…加速する大学との連携

都内では卒業後の進学先を意識した動きが目立つ。もともと大学付属校は人気だが、新たに大学との連携を強化したり、大学傘下入りしたりする例が相次いでいるのだ。

2025年の入試で注目されたのが男子校の日本学園(世田谷区)だ。26年度から共学化し、明治大学の系列校「明治大学付属世田谷」になる。29年度卒業生からは明治大学への推薦枠を卒業者数の7割以上確保する方向だ。25年の合計受験者は前年比36%増で、急上昇している。

女子校の香蘭女学校(品川区)は25年卒生から「立教大学進学枠100%」を確保。三輪田学園(千代田区)は24年から法政大学に計30人の推薦枠を設け、宝仙学園(中野区)は難関医学部を擁する順天堂大学と関係を強化する「系属校協定」を結んで内部進学枠を設けた。

大学と中高一貫校の連携強化は、少子化の中で生き残りをかけた取り組みだ。首都圏模試センターの北一成所長は「中高一貫の私立にとって、有名大学の推薦枠確保は人気を高める重要な要素。さらに大学も少子化の中で早い段階で優秀な生徒を確実に集めたい。ウィンウィンの関係でもあり、今後も広がりを見せるだろう」とみる。

小学校卒業と同時に子どもの大学進学が視野に入ってくれば、余裕を持った中高生時代を過ごさせることができ、保護者にとって魅力は大きい。

中高一貫校と大学が個別に協定を結ぶ「高大連携」も目立つ。中高生向けに大学の模擬講義を提供するなど、大学での学びに触れる機会を設ける取り組みだ。中高一貫校としては、生徒に早くから大学入試を意識させると同時に、指定校推薦の枠を得ることなどを意識しているとみられる。

目立つ「海外大進学」「理系強化」

中堅校は、グローバル教育や理系教育といった特色ある教育を前面に打ち出している。こちらも卒業後の「出口戦略」を意識したものだ。

もともと、私立中高一貫校では英語教育に力を入れる例が多かった。今、注目を集めているのが、海外の大学への進学。中学受験で難関校に入れなかったとしても、中高6年間で国際的に通用する力を付け、海外の大学に進む進路を提示し、生徒を集める狙いだ。

英語教育などの国際教育を充実させて、海外の大学への進学実績をPRする学校も増えている(PIXTA)
英語教育などの国際教育を充実させて、海外の大学への進学実績をPRする学校も増えている(PIXTA)

東京の男子校・佼成学園(杉並区)は2024年入試で受験者数が4割増え、25年も人気が続いた。グローバルコースを中心に英語の少人数授業に取り組み、中学時代に海外の複数国で研修。さらに起業などに関する学習も充実させている。25年春は海外大学への合格者が26人を数えた。簗瀬誠教頭は「一時、志願者が減り、危機感もあって特色ある教育に力を入れてきた。少しずつまいてきた種が育ち、評価をいただいているのかもしれない」と語る。

海外大学に進学する際に使える入学資格を得る教育プログラム「国際バカロレア」などの導入も相次いでいる。北所長は「国際バカロレアのほか、日本の高校に通いながら海外の高校の卒業資格も取れる『ダブルディプロマ』を導入する学校も増え、人気が集まり始めている」と指摘する。

女子校で理数教育をPRする学校も増えている。将来の就職を見据えて保護者の理系熱が高まっているほか、大学で理系学部に女子の入学枠を設けるなどの動きもあるためだ。各校の学校紹介では、高度な実験器具を備える実験室や研究施設を紹介したり、理系学部や医学部への進学実績を前面に打ち出す例が目立つ。

地方にも広がる受験熱 模試結果でかさ上げも

少し前までは中学受験熱と言えば、首都圏や関西圏が中心だった。しかし今は地方にも広がりがみられる。 注目校の一つが北海道の札幌市に隣接する江別市の立命館慶祥中学高校だ。

北海道では公立高校のステータスが高く、中学受験は低調だった。ただ立命館慶祥は、系列の立命館大への進学枠という「売り」に加え、理数教育や国際教育、海外研修、難関大への進学実績を積み重ね、北海道内の中学受験層を掘り起こしている。

入試方法も工夫している。「個性出願」は、芸術やスポーツの成績に加え、学校主催の模試の結果も総合的に判断。面談で認定されれば入試結果に加点し、優秀な生徒の確保を図っている。

地方の学校が首都圏の受験生争奪戦に参加するケースも目立っている。早稲田大学を創設した大隈重信の出身地にある早稲田佐賀(佐賀県唐津市)もその一つ。寮を完備し、早稲田大学への進学枠があるため、首都圏の「早稲田熱望組」がこぞって受験する。現在の在校中学生の出身都道府県は、東京都が136人で、福岡県の124人を抑えてトップ。神奈川、千葉、埼玉の首都圏3県も計58人にのぼる。首都圏での入試は、北海道や愛媛、長野、岐阜など幅広い地域の私立中が行うようになっている。

高校無償化の影響注視

学校間の競争で中堅校も含めて教育内容や卒業後の選択肢が充実してきた結果、受験生と保護者には多様な視点からの中学選びが浸透しつつある。一方、少子化と物価高というブレーキと、「高校無償化」のアクセルが、今後の中学受験業界にどのような影響を及ぼすのかは見通せていない。

さいたま市の栄東中学校の入試会場へ入る受験生たち。少子化と高校無償化の中で、各私立中高一貫校は試行錯誤を続けている(首都圏模試センター提供)
さいたま市の栄東中学校の入試会場へ入る受験生たち。少子化と高校無償化の中で、各私立中高一貫校は試行錯誤を続けている(首都圏模試センター提供)

北所長は「中学受験は多様な選択肢が提示され、偏差値だけでなく6年間でどんな力が身に付くかという視点で志望校を選ぶ時代になった。高校授業料の無償化により世帯年収の上限規制がなくなるので、高校からは負担が軽くなる。少子化の中で受験者数の大幅な増加は難しいかもしれないが、今後は私学を目指す層が広がる可能性もある」と分析している。

バナー写真:2025年1月幕張メッセ国際展示場で行われた市川中(千葉県市川市)の入試。受験熱は高止まりが続いている(首都圏模試センター提供)

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