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浄楽寺 阿弥陀三尊像:六田知弘の古仏巡礼

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天才仏師・運慶が、奈良から関東に遠征して制作した阿弥陀三尊像である。両脇に観音菩薩と勢至菩薩を従える。浄楽寺(神奈川県横須賀市)の本尊として、鎌倉幕府初期の武将・和田義盛が制作を依頼したものだ。

阿弥陀如来像は、右肩をあらわにして袈裟(けさ)をまとい、右手を挙げて左手を下げた「来迎印(らいごういん)」を結ぶ。これは臨終に際し、阿弥陀如来が極楽浄土から迎えに来る姿とされる。

観音菩薩像と勢至菩薩像は、髻(もとどり)を高く結いあげ、やや腰をひねって立つ。阿弥陀如来像がどっしりと落ち着いているのに対して、軽やかな印象だ。

勢至菩薩像(左)と観音菩薩像

勢至菩薩像(左)と観音菩薩像

三尊像はいずれもヒノキの寄木造で、当時流行した水晶をはめ込む玉眼(ぎょくがん)ではなく、彫り出した彫眼(ちょうがん)である。同寺に安置される運慶作の不動明王像と毘沙門天(びしゃもんてん)像は玉眼なので、尊像によって使い分けたのだろう。運慶は、人間とかけ離れた存在としての「仏」を表現するため、人間と同じような目の輝きを演出する玉眼を使わなかったと言われている。この三尊像の制作以降、如来、菩薩には彫眼を施すことが多くなった。5体は1189(文治5)年に30代の運慶が手掛けた作品で、全て国の重要文化財に指定される。

浄楽寺の仏像制作の3年ほど前、運慶は北条時政の依頼によって、願成就院(がんじょうじゅいん、静岡県伊豆の国市)で阿弥陀如来像、不動明王と2童子の三尊像、毘沙門天像を制作している。5像を組み合わせて拝むのは、この時代の武士階級が好んだ信仰スタイルと考えられる。

写真家の六田知弘は、「関東の運慶仏は、奈良のものと雰囲気が違う」と印象を語る。「奈良仏は寺院、関東仏は武士が依頼主。その違いがおのずと現れるのか、奈良のものは仏の慈悲が前面に出て、関東のものは凛々しさが際立つ」

堂々とした阿弥陀三尊像の体躯(たいく)は、信仰する者に揺るぎない安心感を与えたはずだ。運慶は修羅場に生きる武士でも、極楽浄土に行けると伝えたかったに違いない。

三浦半島を支配した和田義盛は、源頼朝が挙兵した後、常に従い功を立て、鎌倉幕府初代の侍所別当となった。軍事・警察を担った組織の長官だったが、北条氏の挑発に乗って争い、一族は滅亡してしまう。義盛は無事、阿弥陀如来に導かれ極楽往生を遂げただろうか。

※ 2025年7月末まで収蔵庫改修のため拝観できない。拝観再開の日程は浄楽寺のウェブサイト等で確認のこと。

阿弥陀三尊像

  • 読み:あみださんぞんぞう
  • 像高:阿弥陀如来坐像:1.41メートル 観音菩薩立像:1.78メートル 勢至菩薩立像:1.77メートル
  • 時代:鎌倉時代
  • 所蔵:浄楽寺(神奈川県横須賀市)
  • 指定:重要文化財(指定名:木造阿弥陀如来及び両脇侍像)

バナー写真:阿弥陀三尊像 浄楽寺蔵 撮影:六田 知弘

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